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婚前契約書には、何を書くのか

行政書士 保利澄香 夫婦のための契約書

「婚前契約書って、離婚の準備みたいで言い出しづらくて」。ご相談のとき、そうおっしゃる方がとても多いです。ドラマの影響か、資産家が財産を守るためのもの、というイメージも根強くあります。

実際に書面を作ってみると、印象はだいぶ変わります。私がお手伝いしていていちばん感じるのは、婚前契約書は「ふたりで話し合ったことを、忘れない形にしておく」ための書面だ、ということです。話し合いそのものに価値があって、書面はその記録です。

よく書かれていること

内容はご夫婦ごとに本当にさまざまですが、実務でよく登場する項目を挙げてみます。

  • お金の分担 — 生活費をどう出し合うか、口座をどう分けるか、大きな買い物はどう決めるか
  • 結婚前からの財産の扱い — それぞれが独身時代に築いた預貯金や持ち物を、どう区別しておくか
  • 仕事と家事の考え方 — 転勤・転職・独立のときにどう相談するか、家事や育児の分担の基本方針
  • お互いの家族との付き合い方 — 帰省の頻度、介護が必要になったときの考え方
  • 話し合いのルール — すれ違いが起きたとき、どうやって話し合いの場を持つか

「こんな細かいことまで書くの?」と思われるかもしれませんが、むしろ細かい日常のことこそ、結婚前に一度言葉にしておく価値があります。価値観のずれは、大きな事件ではなく小さな引っかかりの積み重ねから生まれるからです。

実際のご相談で多いのは、たとえばこんな形です。共働きで収入に差があるおふたり。生活費は完全折半だと不公平感が残るので、収入におおよそ比例させて6:4で共同口座に入れる。片方が独身時代に貯めた預金と投資は、その方の固有の財産のままにする。将来どちらかの親の介護や同居の話が出たら、住まいを決める前に必ずふたりで話し合う──。ここまで言葉になっていれば、書面はもう半分できたようなものです。

条項の書きぶりも、雰囲気だけお見せします(あくまで一般的な一例です)。

第◯条(生活費の分担) 甲および乙は、婚姻中の生活費にあてるため共同の口座を設け、甲は毎月◯万円、乙は毎月◯万円を入金する。いずれかの収入に大きな変動があったときは、協議のうえ金額を見直す。
第◯条(婚姻前の財産) 甲および乙が婚姻前から有する預貯金その他の財産は、それぞれの固有財産とし、婚姻後も各自が管理する。

難しい言葉は使っていません。それでも「共同口座に毎月いくら」「独身時代の財産は各自のもの」と文字になっているだけで、数年後の「そういう約束だったっけ?」がなくなります。

全部が法的な効力を持つわけではありません

正直にお伝えしておきたいのは、書いたことすべてが法律上の強い効力を持つわけではない、ということです。たとえば夫婦の財産に関する取り決めには民法上の根拠がありますが、「週に一度はふたりで食事をする」のような約束は、法的に強制できる性質のものではありません。

それでも書く意味はあります。効力の強い部分は、きちんと要件を踏んで争われにくい形に整える。効力になじまない部分は、ふたりの合意の記録として残す。この整理をしながら作るのが、専門家がお手伝いする意味だと思っています。逆に、法律上の要件や書き方を踏まえずに自己流で作ってしまうと、肝心の部分が働かない書面になることがあります。

話し合いのきっかけとして使ってください

「相手にどう切り出せばいいか分からない」というご相談もよくいただきます。おすすめしているのは、契約書という言葉から入るのではなく、「結婚する前に、お金のことをちゃんと話しておきたい」という話題から入ることです。話し合った結果を形にする方法として婚前契約書がある、という順番なら、身構えられにくくなります。

進め方の実務もお伝えしておくと、最初にビデオ通話でおふたりの考えをうかがい、当事務所で原案を作り、メールで2〜3往復ほど整えて完成、というのが標準的な流れです。すべてビデオ通話とメールで完結しますので、全国からご相談いただけます。料金は契約書のみの作成が250,000円(税込)、公正証書にする場合は270,000円(税込)に公証役場の手数料の実費が加わります。公正証書にするかどうかの考え方は、また別のコラムで書きますね。

ご相談は、お問い合わせフォームから承っています。おふたりの話し合いがまだ始まっていない段階でも、大丈夫です。

出典・参考(いずれも行政機関の公表資料です)

本コラムは制度の一般的なご説明であり、特定の事案に対する法的助言ではありません。個別の事案についての法律判断・見通し、示談交渉、裁判手続の代理は行政書士の業務範囲外となりますので、必要な場合は提携の弁護士・税理士・司法書士をご紹介しています。

記載内容は執筆時点の情報にもとづいています。制度・運用は変わることがありますので、実際のお手続きの前に最新の情報をご確認ください。

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