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COLUMN

登記は「畑」のまま、家が建っていた

行政書士 保利澄香 農地転用・都市計画法許可

「実家を売ろうとしたら、不動産屋さんに『建物の下の土地が畑のままです』と言われました」。このご相談、珍しくありません。ご本人はまったく悪気がないどころか、そもそも知らなかった、というケースがほとんどです。

何十年も前に親御さんやお祖父様が畑の一角に家や倉庫を建て、登記はそのまま。固定資産税は払い続けてきたし、誰からも何も言われなかった。それが売却、あるいは融資の担保評価という「他人の目が入る場面」で、はじめて表に出てくるのです。

なぜ問題になるのか

農地を農地以外のものにするには、農地法にもとづく届出や許可が必要です。これを経ないまま建物が建っていると、農地法上の違反状態にあたる可能性があります。売買の場面では買主側が敬遠しますし、金融機関も担保として扱いにくくなります。登記地目を宅地に変える手続きも、農地法の手続きが先に片づいていないと進みません。

「今まで何も言われなかったのだから、このままでいいのでは」と思われるかもしれませんが、放置していて自然に解消することはありません。そして経験上、こうした問題は売却や相続の期限が迫った、いちばん余裕のないタイミングで見つかります。

是正のための手続きは、ちゃんと用意されています

安心していただきたいのは、違反状態を正すための手続きが制度として用意されている、ということです。俗に「追認」と呼ばれることもある、事後的な是正の道筋です。

どの方法が取れるかは、建てられた時期、建物の用途、対象地が市街化区域か市街化調整区域か、現況がどうなっているか、によって変わります。たとえば市街化区域内であれば比較的整理しやすいことが多く、市街化調整区域では立地基準の検討が必要になります。長年耕作の実態がない土地なら、非農地証明という別の道筋を検討できる場合もあります。

実務での進み方を、もう少し具体的に。たとえば昭和の時代にお祖父様が畑の隅に建てた倉庫が、そのまま残っているケース。この場合、いつごろ・誰が・何のために建てたのかを分かる範囲で整理した顛末書(経緯書)を添えて、本来必要だった手続きを事後的に行う形をとるのが典型です。そのとき効いてくるのが「その時期から建物があった」ことの裏づけで、古い航空写真や、家屋に固定資産税がかかり始めた年の記録がその役割を果たします。古い課税明細書や納税通知書は、捨てずにそのままお持ちください。

スケジュールの面でも、知っておいていただきたいことがひとつ。農地の許可や届出の多くは、農業委員会の月1回の総会で審議されます。提出の締切を1日過ぎると、次の総会まで丸1か月待ちです。売却の決済日が決まっている案件ではこの1か月が命取りになりかねないので、当事務所では最初に締切から逆算して段取りを組みます。

つまり「調べてみないと分からない」のですが、裏を返せば、順を追って調べれば道筋の見える分野です。当事務所では、登記情報と区域区分を確認し、所管の農業委員会に取扱いを確認したうえで、進められるかどうかの初期判断を1〜3営業日を目安にご報告しています。

怒られるのが怖くて相談できない、という方へ

「農業委員会に問い合わせたら、怒られるんじゃないか」と心配される方が多いのですが、実務の肌感覚として、誠実に是正しようとする方に対して窓口が高圧的になることはまずありません。何十年も前の経緯まで正確に説明できなくても大丈夫です。分かる範囲の事実を整理して、正面から手続きに乗せることが、結局いちばんの近道になります。

ひとつだけ正直にお伝えすると、是正すれば必ず思いどおりの結果になる、とはお約束できません。特に市街化調整区域では、望む形での転用が認められない場合もあります。その場合も、取り得る選択肢を並べてご説明しますので、「知らないまま止まっている」状態からはかならず前に進めます。

なお、農地法の手続きが片づいたあとの地目変更の登記は土地家屋調査士、所有権の登記は司法書士の業務範囲です。当事務所で農地法の部分を整えたうえでおつなぎしますので、間で話が途切れることはありません。

まずは課税明細書や登記の写しなど、お手元の資料をそのままお送りください。ご相談はお問い合わせフォームから承っています。

出典・参考(いずれも行政機関の公表資料です)

本コラムは制度の一般的なご説明であり、特定の事案に対する法的助言ではありません。個別の事案についての法律判断・見通し、示談交渉、裁判手続の代理は行政書士の業務範囲外となりますので、必要な場合は提携の弁護士・税理士・司法書士をご紹介しています。

記載内容は執筆時点の情報にもとづいています。制度・運用は変わることがありますので、実際のお手続きの前に最新の情報をご確認ください。

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