知り合いの畑は、転用の手続きが半月ほどで終わったと聞いていた。それなのに自分の畑は、半年から1年かかる見込みだと言われた。同じ県の、同じような広さの、同じ「畑」なのに、と納得しづらく感じるのは自然なことだと思います。
差がつくのは、まず、その農地がどこにあるかです。広さや地目より先に、場所で手続きの重さが決まります。
手続きは、まず3つの型に分かれます
農地法が規制しているのは、農地を農地以外のものに変えること(転用)と、農地の権利を人から人へ移すことの2つです。この組み合わせで、手続きは3つに分かれます。
農地を農地のまま売ったり貸したりするのが3条、所有者はそのままで自分の農地を駐車場や宅地に変えるのが4条、売却して買主が宅地や事業用地として使うのが5条です。農地を手放したい場合は、たいてい5条の型になります。当事務所が主にお引き受けしているのも4条と5条の手続きで、3条は買い手側に営農の要件が課される性質上お受けできない場合が多く、調査の段階でその旨をお伝えしています。
ここまでは、どこで調べても同じ説明が出てきます。実際に差がつくのは、この先です。
市街化区域なら届出、それ以外は許可
同じ4条・5条でも、対象地が市街化区域の中にあるかどうかで、手続きの重さが大きく変わります。
市街化区域は、都市計画法で「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定められています(第7条第2項)。農地が宅地に変わっていくことがもともと織り込まれている区域なので、転用は農業委員会への届出で足ります。書類が整って農業委員会に届け出てから、受理の通知が届くまでは1〜2週間ほどが目安です。冒頭のお知り合いの畑は、おそらくこの区域にあったのだろうと思います。
ただし、市街化区域の中でも、生産緑地地区に指定されている農地は別です。生産緑地地区の中では、建物を建てることや宅地の造成に市町村長の許可が要り、その許可も農業用の施設などに限られるため、農業委員会への届出だけでは転用できません。建てられるようにするには、市町村への買取りの申出などの手続きを先に踏む必要があり、申出ができる時期や条件も限られています。
市街化区域の外では、届出ではなく許可が必要です。申請書は農業委員会を経由して都道府県知事等に送られます。農業委員会が総会での審議を経て意見を付け(30アールを超える農地では、その前に都道府県農業委員会ネットワーク機構の意見も聴きます)、そのうえで知事等が許可するかどうかを判断します。そのため、1か月半から3か月程度かかるのが一般的です。同じような書類仕事に見えても、審査の中身が違います。
市街化調整区域では、農地の許可だけでは家が建ちません
「農地なのに家が建たない」と言われる理由は、ここにあります。
市街化調整区域は、都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」とされています(第7条第3項)。建物を増やさない方向で運用される区域なので、ここで建物を建てる場合は、農地法の許可とは別に、原則として都市計画法の開発許可や建築許可が必要になります。その許可が出るのは、法律や自治体の条例・審査基準で認められた場合に限られます。たとえば、周辺にお住まいの方の日常生活に必要な店舗や、自治体の基準に合う分家住宅などです。農業を営む方ご自身の住宅は例外で、都市計画法の許可は要りません(農地法の転用許可は別に必要です)。どれに当てはまるかは、誰がどういう目的で建てるのかによって変わります。なお、建物を伴わない駐車場などにする場合は、通常、この都市計画法の許可はかかりません。
しかも、この二つは別々に動くわけではありません。農地転用の審査では、ほかの法令の許可が得られる見込みがあるかどうかも確かめられるので、都市計画法の許可の見込みが立たなければ、農地転用の許可も下りません。「農地転用さえ通れば建てられると思っていた」というのは、陥りやすい誤解です。二段構えで、しかも両方がかみ合っている必要がある、と考えていただくのが実態に近いです。この区域の案件では測量や現地調査を伴うことも多いので、当事務所では土地家屋調査士などの専門家と連携して進めます。
農地そのものにも、転用しやすさの区分があります
もうひとつ、区域とは別の軸があります。農地そのものの区分です。
まとまった規模の優良な農地や、土地改良事業などの公共投資が行われた農地(第1種農地など)は、農業を続けるべき土地として保護され、転用は原則として認められません。反対に、市街地の中にある農地や、駅の近くで周囲の宅地化が進んでいる農地(第3種農地)は、転用が原則として認められる区分です。同じ市街化調整区域の中でも、道路一本隔てて扱いが変わることがあるのはこのためです。
時間がかかるのは「青地」の農地です
もっとも時間がかかるのが、農業振興地域の農用地区域、いわゆる「青地」に入っている農地です。青地の農地は原則として転用ができず、まず農用地区域から外してもらう手続き(農振除外)を経る必要があります。この除外の申出は、受付が年に1〜2回という自治体も珍しくなく、半年から1年はみておく必要があります。
売買の話が先に進んでいて、決済の期限まで3か月しかない、というタイミングでこれが判明すると、間に合いません。先に調べておけば選べたはずのことが、選べなくなる。この分野でとてももったいないのは、この形です。
青地に入っているかどうかは、市町村の農政担当の窓口で確かめられます。地番の調べ方から区域区分の確かめ方までの順番は、相続した農地、まず何から調べればいいのかにまとめました。
だから、調べるところから始めます
当事務所では、登記・区域区分・農業委員会への確認を最初に済ませ、1〜3営業日を目安に、進められる案件かどうかの初期判断をお伝えしています。用地の取得や事業計画の前に、その土地にかかる法令をまとめて確かめておきたい場合は、各所管課への照会結果を一覧にした法令調査票(用地調査用)もご用意しています。
ひとつお約束できないのは、結果です。許可を出すかどうかを判断するのは行政庁ですので、当事務所ができるのは、調査にもとづく見通しをそのままお伝えするところまでです。難しい案件では、その理由と、代わりに取り得る選択肢をご説明します。できないことをできると申し上げないのが、この分野での誠実さだと考えています。
また、測量・分筆・地目変更登記は土地家屋調査士、所有権移転登記は司法書士、税額の計算と申告は税理士、共有者間の争いは弁護士、売買の仲介は宅地建物取引業者の業務範囲です。必要な場面では、提携する専門家と連携します。
調査から申請までの流れと料金は、農地転用・都市計画法許可サポートのご案内にまとめています。
まずは地番だけお知らせください。お手元の課税明細書や登記の写しをそのまま送っていただければ、こちらで読み取ります。ご相談はお問い合わせフォームから承っています。
出典・参考(いずれも行政機関の公表資料です)
- 農地転用許可制度について農林水産省
- 農地法(昭和27年法律第229号)※第4条・第5条e-Gov法令検索
- 都市計画法(昭和43年法律第100号)※第7条・第29条・第34条・第43条e-Gov法令検索
- 農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)e-Gov法令検索
- 農地法に係る事務処理要領(農地転用抜粋)※市街化区域内の届出の処理期間農林水産省
- 生産緑地法(昭和49年法律第68号)※第8条・第10条e-Gov法令検索
本コラムは制度の一般的なご説明であり、特定の事案に対する法的助言ではありません。個別の事案についての法律判断・見通し、示談交渉、裁判手続の代理は行政書士の業務範囲外となりますので、必要な場合は提携の弁護士・税理士・司法書士をご紹介しています。
記載内容は執筆時点の情報にもとづいています。制度・運用は変わることがありますので、実際のお手続きの前に最新の情報をご確認ください。
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