親御さんが亡くなって、銀行の窓口に行くと、こう言われます。「お父様の、お生まれから亡くなるまでの連続した戸籍をお持ちください」。
ここで多くの方が途方に暮れます。死亡の記載がある戸籍なら分かる。でも「出生から」とは? 役所で最新の戸籍を取ってみたら、「これでは足りません」と言われた。何がどう足りないのか、説明を聞いてもよく分からない。──このあたりで手が止まって、ご相談にいらっしゃる方がとても多いです。
なぜ「全部」必要なのか
理由はシンプルで、相続人が誰なのかを、記録の上で確定させるためです。
いまの戸籍だけでは、その方の人生の一部しか写っていません。戸籍は結婚や転籍(本籍地の引っ越し)のたびに新しく作られ、さらに法改正でも作り替えられてきました。そして作り替えのとき、すでに除籍された人は新しい戸籍に載りません。つまり、若い頃に認知した子、前の結婚のときの子といった情報は、古い戸籍にしか残っていないのです。
「うちに限ってそんなことは」と思われるでしょうし、実際ほとんどの場合は何も出てきません。でも金融機関や法務局は、記録で確認できない限り「いない」とは扱えません。だから出生までさかのぼった連続した戸籍が要る、という理屈です。
大変さの正体は「たどる作業」
戸籍集めの大変さは、枚数ではなく、たどる作業にあります。古い戸籍には「どこから来たか」が書いてあるので、それを読んで前の本籍地の役所に請求し、届いたらまたその前を読んで請求する。これの繰り返しです。本籍地が遠方なら郵送請求になりますし、昔の戸籍は手書きの旧字体で、読み解くのにも慣れが要ります。転籍の多い方だと、それだけで数か月かかることもあります。
郵送請求の実務も、少しだけお見せします。請求先の役所ごとに、請求書・本人確認書類の写し・返信用封筒に加えて、手数料分の定額小為替を同封します。手数料は全国共通で、戸籍謄本が1通450円、古い除籍謄本や改製原戸籍は1通750円。定額小為替は郵便局の貯金窓口でしか買えず、平日しか開いていません。しかも何通必要になるかは届いてみないと分からないので、多めに入れてお釣りが小為替で返ってくる、という少しのどかなやりとりがいまも続いています。たとえば転籍2回・法改正による作り替えをはさんだ標準的なケースで、戸籍は5〜8通、役所に払う手数料は合計4,000〜6,000円くらいに収まることが多いです。
なお、令和6年からは広域交付という仕組みが始まり、本籍地が遠方でも、最寄りの役所の窓口でまとめて請求できるようになりました。便利な制度ですが、窓口にご本人が出向く必要があり(郵送では使えません)、請求できるのは本人・配偶者・直系の親子や祖父母の分だけで、兄弟姉妹の戸籍は対象外。電子化されていない古い一部の戸籍も出てきません。平日に役所へ行ける方は、まずこれを試してみる価値があります。
当事務所では、この収集を職務上請求という仕組みを使ってお引き受けしています。「戸籍集めだけお願いしたい」という部分的なご依頼も承っていますし、郵送とオンラインで完結するので全国からご依頼いただけます。平日に役所を回る時間が取れない方、手書きの旧字体をたどるのが不安な方は、ここだけ外注していただくのが早道です。
集めたら「法定相続情報一覧図」を作るのがおすすめです
戸籍が揃ったあとにも、実はもうひと山あります。銀行A、銀行B、証券会社、法務局……と、提出先ごとに戸籍の束を出しては返してもらう作業です。原本の束を回している間、ほかの手続きは待ちになります。
ここで便利なのが、法務局の法定相続情報証明制度です。相続関係を一枚の図(法定相続情報一覧図)にまとめ、戸籍の束と一緒に登記所へ提出すると、登記官が内容を確認して認証文を付けた写しを、無料で必要な通数交付してくれます。あとは各窓口にこの一枚を出せばよいので、戸籍の束を回し続けずに済みます。図は5年間保管されるので、その間は再交付も受けられます。相続手続き全体のスピードが目に見えて変わるので、当事務所では基本セットとしてご案内しています。
なお、その先の不動産の名義変更(相続登記)は司法書士の、相続税の申告は税理士の業務範囲です。当事務所で戸籍一式と書類を整えた状態でおつなぎしますので、同じ書類を二度集める必要はありません。また、相続人のあいだにすでに争いがある場合は弁護士のご紹介となります。
何から手をつければいいのか分からない、という段階からで大丈夫です。ご相談はお問い合わせフォームから承っています。
出典・参考(いずれも行政機関の公表資料です)
本コラムは制度の一般的なご説明であり、特定の事案に対する法的助言ではありません。個別の事案についての法律判断・見通し、示談交渉、裁判手続の代理は行政書士の業務範囲外となりますので、必要な場合は提携の弁護士・税理士・司法書士をご紹介しています。
記載内容は執筆時点の情報にもとづいています。制度・運用は変わることがありますので、実際のお手続きの前に最新の情報をご確認ください。
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